1930年、上海の共同租界。
名門ブラックウェル家を出たVVとMGは、放課後のマリア女学院の校庭で仲間たちと向き合っていた。
VV「生活費と学費を稼がなきゃ。だから、カフェをやろうと思うの」
MG「え、急に?」
VV「急じゃないよ。必要だからやるだけ」
そこにナディアとマナも加わり、4人での共同経営が決まった。
経理は白執事が担当することになり、少女たちの小さな商会が動き出す。
紅烈が大家を紹介してくれたおかげで、商店街の一角にある古い商店を借りられることになった。
瓦屋根は欠け、木枠の窓は軋み、通りには人影もまばら。
それでもVVは目を輝かせた。
VV「ここ、絶対に良くなるよ。風通しがいいし、光も入る」
MG「ポジティブすぎるよ…」
少女たちは古い店を改造し、カフェに生まれ変わらせる計画を立てた。
店名を決める会議は、放課後の教室で行われた。
VV「“スパイ・カンパニー”ってどう?私とMGがやってることが一目でわかるように」
MG「いや、スパイが自分で名乗っちゃダメでしょ」
VV「じゃあ…“幸福商会”。みんながハッピーになれるように」
ナディア「本当にそれでいいの?」
VV「うん。でも後で変えるかもしれないから、“幸福商会(仮)”で」
マナ「わかりました。登記しておきますね」
翌日。
MG「マナ、本当に“幸福商会(仮)”で登記したの?」
マナ「はい。言われた通りに。変更するときは言ってくださいね」
こうして、世界でも珍しい“(仮)つき商会”が誕生した。
試作を重ねたケーキの命名も、VVの独断だった。
VV「このケーキは“幸福1号”にしよう」
MG「なんでケーキの名前が1号なのよ」
VV「最初だから。みんなが一番ハッピーになれそうでしょ」
MG「センスない」
VV「バリエーションも作ろう。“幸福1号(レモン味)”“幸福1号(マンゴー味)”…」
MG「いっぱい出したら1号じゃないじゃん!」
VV「どこまで行っても1号でいいんじゃない?」
そこへマナがナディアが新作を差し出す。
マナ「ナディアさんの“Joy55号”もおいしいですよ」
MG「なんで急に55が出てくるのよ!」
VV「でも不思議な味で美味しい。海のイメージ?」
ナディア「そうでしょう!サバが入ってるの」
MG「( ゚Д゚)」
ケーキの名前の奇妙さは瞬く間に町の噂になった。
市民「なんで“1号”なのか気になって仕方がない」
カフェに続き、食堂「幸福食堂(Happy Restaurant)」も開店。
2つの店が並ぶ通りは、いつしか人々から“幸福路(Happy Mall)”と呼ばれるようになった。
警察「ここは公道だ」
VV「公道よね、歩けるし。それが何か?」
VVは周囲の屋台や商店の大人たちと商店会を組織し、統一したまちづくりを始めた。
ガス灯の通りに電灯をつける計画を立てたが、ノラミの計算は厳しかった。
ノラミ「発電機の容量が不足してるよ」
VV「1ヶ月後に大容量発電機が来るけど…オープン記念は派手にやりたいのに」
そこでVVは、以前の“とある事件”で日本陸軍に恩を売っていたことを思い出す。
VV「というわけで、1ヶ月だけ電気を貸してほしいの」
丹頂少佐「内緒だぞ」
稲葉軍医「絶対にだぞ」
MG「そう言いながら、楽しそうに商店街歩いてるわね…」
こうして幸福路は、軍の秘密電力で1ヶ月だけ明るく照らされることになった。
オープン準備が進む中、VVは店先から通りを眺めて呟いた。
VV「なんか、見知った顔が歩いてるね」
MG「前のスパイ事件で見た顔だわ」
各国のスパイたちが、私服で幸福路をぶらつき、
互いに気づかないまますれ違い、酒を酌み交わしている。
驚いているのは、前にそのスパイたちと戦ったVVたちとレオン、紅烈の紅蓮隊だけだった。
電力供給が決まった直後、レオンがふらりと店にやってきた。
レオン「日本陸軍の基地を攻撃する計画があるようだぞ。日本軍の連中が慌てている」
VV「何ですって?大変だわ」
MG「なんでVVが慌てるの?」
VV「商店街に電気が来なくなっちゃう!」
MG「そっちか」
レオン「事件が起きれば電気は止まる。秘密裏に処理しよう」
VV・MG・レオンは夜中に基地周辺を巡回した。
すると、フェンスを越えようとする影が4つ。
レオン「止まれ!身分証を見せろ」
工作員たちが差し出した証明書には――
レオン「日本海軍じゃないか」
VV「陸軍と海軍って、こんなに仲悪いのね…」
レオン「祭りが終わるまでこいつらは閉じ込めておく。祭りが終わったら陸軍に引渡す」
MG「でも陸軍に引き渡したら、この人たち殺されるかもよ」
レオン「大丈夫だ。後で俺と紅烈が助け出す。そうすれば海軍に恩も売れる」
VV「海軍に恩を売っておいて悪いことないわよね。日本陸軍も海軍も、これから上海で何かするなら、私たちに話を通してもらわなくちゃ」
捕まった海軍工作員たちは、拘束中ずっとVVたちの食事とお菓子を食べ続けた。
工作員A「なんか最高だな」
工作員B「もう帰りたくなくなってきた」
その頃、何も知らない各国スパイたちは、相変わらず幸福路で食べ歩きを楽しんでいた。
少女たちの小さな挑戦は、スパイも軍人も市民も巻き込みながら、
上海で最も奇妙で、最も賑やかな通りを作り上げていく。
幸福1号店の灯りは、今日も人々を照らし続けている。
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